ファクタリングは売掛金を迅速に資金化する手法ですが、その支払方法や期限は契約の形態によって異なる点にご注意ください。
中小企業では、売掛金の支払日を待たずして資金繰りが悪化するリスクがあるため、この手法を活用する上で、ファクタリングの流れや支払いに関する理解を深めておくことが重要です。
今回は、ファクタリングでの「支払い」が意味する内容や、期日遅延を避けるための対策、利用時の留意点について詳しく解説します。
ファクタリングにおける「支払い」とは何を指すのか？
ファクタリングとは、売掛金を買い取ってもらい資金を得る資金調達手段の一つで、企業が売掛金を回収する前に現金を手にすることが可能なサービスです。
手数料が発生するものの、売掛金の支払日を待たずに資金を調達できるため、資金繰りに悩む事業者に適しています。
売掛金を早期に現金化することで、企業の運転資金として役立てることができます。
その後、売掛先から入金があれば、その金額をファクタリング会社に支払う義務が生じます。
ファクタリングにおいて「支払い」とは、売掛先から振り込まれた売掛金をファクタリング会社に支払うことを意味します。
ただし、2者間か3者間ファクタリングかによって支払方法が違うため、各種契約内容や期日についても確認が必要です。
2者間ファクタリングのケース
2者間ファクタリングは、売掛金の譲渡をファクタリング会社と利用者の間で行う契約形態です。
この契約では、売掛先はファクタリングの利用を知らされないため、売掛金の回収は利用者が担います。
売掛金が入金されたら速やかにファクタリング会社に支払う義務が生じます。
2者間ファクタリングに含まれる支払項目
2者間ファクタリングでは、売掛金の他に、サービス利用に伴う手数料を支払う必要があります。
手数料には基本的な売買手数料の他に、登記費用などの実費が含まれる場合もあります。
この手数料は、ファクタリング会社から売掛金代金を受け取る時に差し引かれるため、売掛先からの売掛金をファクタリング会社に支払う時に上乗せする必要はないです。
2者間ファクタリングの手数料は売掛金の8～18％程度が目安となっています。
2者間ファクタリングの支払期日について
2者間ファクタリングでは、売掛先から売掛金が振り込まれたタイミングで支払いを行います。
売掛金の回収は利用者が担当するため、回収した売掛金はファクタリング会社に責任を持って支払わなければなりません。
3者間ファクタリングの場合
3者間ファクタリングは、ファクタリング会社、利用者、売掛先の3者で契約する形態です。
ファクタリング会社への譲渡を売掛先に通知し、ファクタリング利用に同意を得る必要があります。
この形態では、売掛先が直接ファクタリング会社に売掛金を支払うため、利用者が回収を行う手間が省かれます。
3者間ファクタリングでの支払項目
3者間ファクタリングでも、売掛金と手数料の支払いが求められますが、契約に売掛先が関与するため手数料が抑えられる傾向にあります。
3者間ファクタリングの手数料相場は2～9％程度で、2者間ファクタリングよりも低く設定されることが一般的です。
3者間ファクタリングの支払期日について
3者間ファクタリングの支払期日は事前に定められた日に、売掛先がファクタリング会社へ直接支払う形となります。
これにより、利用者は売掛金の回収をする必要がありません。
ファクタリング会社への支払いが遅れる場合の注意点
ファクタリングを利用する際に最も注意したいのが支払期日です。
売掛金の入金後、すぐにファクタリング会社へ支払う必要があります。
資金繰りができていれば、ファクタリング会社への支払期日時点で不足することは稀ですが、他の支払いが重なると支払いが遅延するリスクがあります。
ファクタリング会社への支払い遅延は原則として認められていません。
売掛金がファクタリング会社の資産となるため、支払いに充当しない場合、法的に問われる可能性もあります。
ファクタリングは融資とは異なるため、適切に資金を管理し、回収した売掛金を期日内に支払うよう心がけることが大切です。
「資金繰り表」を作成して資金管理を行う
ファクタリング会社への支払期日に間に合わせるためには、資金繰り表の作成が重要です。
資金繰り表の活用方法
資金繰り表は、一定期間の現金収支を記録し、資金の流れを把握するための表です。
売上が計上されても現金が不足する場合があるため、収支の流れを可視化する資金繰り表は支払い管理に役立ちます。
長期的に安定した経営を維持するためにも、資金繰り表を活用しましょう。
資金繰り表の作成方法
資金繰り表を作成するには、月次試算表、現金出納帳、預金通帳、借入明細などを準備し、現金取引のみを抽出します。
エクセルを使用してフォーマットをカスタマイズし、以下の項目を入力します。
- 前月繰越
- 経常収入
- 経常支出
- 経常収支（経常収入－経常支出）
- 財務収入
- 財務支出
- 財務収支（財務収入－財務支出）
- 経常外収入
- 経常外支出
- 経常外収支（経常外収入－経常外支出）
- 翌月繰越（前月繰越＋経常収支＋財務収支＋経常外収支）
エクセルの計算式を活用することで、計算ミスを防ぎながら効率よく資金繰り表を管理できます。
ファクタリングを利用する際のその他の注意点
売掛金を資金に変えるファクタリングは、資金が不足しがちな企業にとって有益な手段ですが、利用時には以下の点に注意が必要です。
手数料に注意してキャッシュフローを管理する
ファクタリングは売掛金を事前に現金化できますが、手数料がかかります。
売掛金の額に応じて手数料は異なり、2者間ファクタリングで8～18％、3者間ファクタリングで2～9％が相場です。
売掛金から手数料が差し引かれることを理解し、手取り額を計算しておきましょう。
3者間ファクタリングでは取引先の同意が必要
3者間ファクタリングを利用する場合、売掛先にファクタリングを利用することを通知し、同意を得る必要があります。
ファクタリングを利用していることが取引先に伝わることで、資金調達の状況を知られる可能性もあります。
悪徳業者の存在に注意する
一部には手数料の名目で不当な支払いを求める悪徳業者も存在します。
契約内容や支払項目を十分に確認し、不要な支払いが発生しないよう注意を払いましょう。
ファクタリングは支払い期日を守って有効に活用しましょう
ファクタリングは、資金調達が難しい企業に適した方法ですが、手数料や期日の厳守が必要です。
また、3者間ファクタリングの利用時には、取引先の了承を得るなど、リスクを把握した上で検討することが重要です。
ファクタリングの利用にはメリットがある一方で、適切な資金管理やリスクの把握も必要です。
支払い期日を守り、確実に資金繰りを行うことで、ファクタリングを効果的に活用できるでしょう。
万が一、ファクタリング会社への支払いが遅れると、法的な問題に発展する可能性があるため、資金が不足しないように十分な備えをしておくことが大切です。
ファクタリングの支払いは、会社の信用に関わる重要な要素ですので、計画的に進めることで、長期的な経営の安定にもつながります。
以上を踏まえ、ファクタリングの仕組みや支払いについて正しく理解し、賢く資金調達を行っていきましょう。
